自動車の自動運転などのセンシングで利用されるようになった近赤外線。例えば人感センサ付き照明や自動ドアのセンサなど、自動車分野以外でもずっと以前から近赤外線センサは私たちの日常で多く使われています。

屋外で使われる近赤外センサは太陽光の影響を受ける恐れがあり、ここ数年は太陽光の赤外線の影響を調べたいというご相談が増えています。

その中でも太陽光の影響が小さい940nm付近に感度を持つセンサを使ったシステムはとても多く、自動運転用車載センサに用いられるケースが多いです。

赤外線センサの事はより詳しい方に譲るとして、光の専門家の立場からは太陽光の近赤外線の分光についてお話ししたいと思います。

まず、なぜ940nm付近に感度を持つセンサが多いかというと、この波長帯は太陽光の減衰が大きいからです。
(下図参照)

 
 

太陽先生の豆知識「太陽光の近赤外はところどころの波長で減衰がある」太陽放射の分光強度の図
※注:図の横軸(波長)の単位は“µm”となっています。1.0µmは1000nmと同じです。
 
 

ではなぜ940nm付近の減衰が大きいのか、調べてみました。

太陽光は地表に到達するまでに、地球の大気で吸収・散乱されます。散乱では波長特性が変わることはないのですが、吸収では波長が変わります。吸収の主な要因としては、

(1)水蒸気分子による吸収
(2) 雲による吸収
(3) エアロゾルによる吸収

が挙げられます。

この中で波長特性に最も大きな影響を及ぼすのが水蒸気です。

上の図をご覧になると、水蒸気(H2O)によって820nm付近、860nm付近、940nm付近などいくつかの波長帯で減衰が見られます。

酸素(O2)は730nm付近に減衰に、オゾン(O3)は紫外~可視域にかけての減衰にそれぞれ影響を及ぼします。近赤外域の波長特性に影響を及ぼすのは、主に水蒸気です。

ちなみに雲やエアロゾルによる吸収は全波長帯に影響を及ぼすので、水蒸気のような特定の波長域への影響を及ぼすというわけではありません。

特に落ち込みが大きい940nm付近の近赤外域が赤外線センサの感度波長として採用された理由がよく分かります。

 
人の目には見えない赤外線、その活躍もさまざまですね。

 
 

<参考文献>
・早坂忠裕 大気は太陽放射をどれだけ吸収するのか?(1995年11月気象学会)
 https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1995/1995_11_0789.pdf
・近藤純正 日射と大気放射(1990年水文・水資源学会誌)