自動車のデザインは外装だけではありません。外見のカッコよさが重要なのはもちろんですが、最近は車内の居住性も重要度が高まっています。シートの座り心地や質感、オーディオの音質、視界、冷暖房の性能や空気清浄など、様々な要素で居住性能を高める開発が活発に行われています。特にレベル5の完全自動運転が開始されると、自動車内はまさしく「移動するリビング」になります。
それとは別に、ユーザーが求める内装にもいろいろなタイプがあります。シックで重厚感のある黒色、レザー調で高級感のある茶色、明るくやわらかな印象のベージュ、シャープでスタイリッシュな白色など、内装の色にも多様な好みがあります。車種はもちろん、収入や年齢、家族構成、趣味など、ユーザーの置かれた環境によっても内装に求める条件は変わりますし、中型の大衆車や軽自動車でも高級に内装をあつらえることは可能なので、そのパターンは無限にあると言えます。
もちろん室内は単色ではありません。素材によって様々な色が選択されています。シートはレザーであったり生地であったりします。ダッシュボードは樹脂、床は生地が多く使われています。内装材メーカーは自動車メーカーから受注する際、自動車メーカーから支給される色見本に基づいて生産することが多いです
色見本には上限と下限が設定されており、その範囲内での生産を求められます。その色見本の上限下限を一度見せて頂いたことがありますが、上限と下限の違いが素人には理解できないくらい微妙な差でできていました。そのような小さな差の範囲内で製造しなければならない難しさがあります。製造物がその差の範囲内で製造されているかどうかのチェックは、色差計などの計測器による管理と目視検査の両方が行われます。
ここでの問題点は、隣り合った同じ素材のパーツが違うロットで生産されているかもしれない、という点です。例えば、エアコンの風の出口にあるレジスターは、ダッシュボードやエアバッグのカバーと同じ色にしなければなりませんが、原材料が同じロットとは限りません。また革製品であるシフトノブのカバーとステアリングも、おそらく違うロットで生産されていると思います。ロット間の色の違いをなくすために色彩管理手法がとられますが、表面の艶や処理の状態によって正確に計測できない場合があります。
上の3枚の写真は、自家用車の車内を写した写真です。左の写真、シートとヘッドレストに使われているのは同じ生地のはずですが、違うロットの生地が使われて生産されている可能性があります。真ん中の写真も、シートの背面とトランクルームに使われているのは同じ生地のように見えました。右の写真の、ダッシュボードとコンパネは、工程さえ違う、場合によっては工場が違うかもしれません。写真では、ダッシュボードとコンパネは若干違う色に見えます。ここで使われている樹脂は独特で、見る角度によって色が違って見えるように作られています。このような表面処理を施した製品の色評価は難しいです。当然見た目の検査が行われているはずです。
これらのような製品の目視検査用として、人工太陽照明灯SOLAXはとても重宝されています。
その理由は、
・人工太陽照明灯は分光特性が晴天時の正午±2時間の自然太陽光に極めて近く、色を正確に評価管理するための光源として世界最高の特性を有している
・直流点灯でチラツキがないから、目が疲れない
・経時的変化も極めて小さいため、評価用光源としての特性が変化せず長時間使用できる
という3つのメリットがあるからです。
近年は高演色性LEDが採用されることもあるようですが、前述の微妙な差の色見本に製品の色を合わせるような細かな色の違いを正確にみるためには、人工太陽照明灯でなければならないとおっしゃるお客様が多くいらっしゃいます。
コンパネやシート全体を検査する場合は500Wシリーズが、小さい製品の検査は100Wシリーズが、上下左右いろいろな角度で検査する場合はハンディタイプのSOLAX-iOが使われます。お客様のご要望に添えるラインナップを用意しております。
正しい光環境で自動車内装材の色評価を行いたい、とお考えでしたら、ぜひ経験豊富な弊社へお気軽にお問合せ下さい。