私たちは日常で多くの色を目にしており、その色が持つイメージを自然と感じ取りながら生活しています。
色があるのは物体だけではなく、光源にもあらゆる光色が存在します。光色によって人間の心理に与える影響は異なり、例えば、朝日や夕日を見てホッと安心するような暖かい気持ちになったり、青色や白色に輝くイルミネーションを見て目が覚めるように心奪われたりと、光色から受ける印象は様々です。また、光色の影響は心理的な印象だけでなく、サーカディアンリズム(概日リズム)にも及んでおり、時間帯や光色に応じて私たちの体内時計に作用し、覚醒やリラックスのリズムをサポートします。
光色は、「色温度」という特殊な尺度で数値化して表すことができます。
色温度は、温度の単位であるケルビン(K)が用いられ、数値が低いと赤みの強い色となります。数値が高くなるにつれ白くなり、さらに上がると青みが強くなっていきます。
色温度の変化によって光源色が変わり、その光が物体に照射されることで光色が変化します。これにより、光色による心理効果も色温度を用いて表すことができます。
ただし、色温度といっても実際の光は燃えたり熱せられたりしているわけではなく、「燃えているとしたら何度くらいなのか」という観点から色温度という概念が利用されています。
色温度についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
本記事では色温度の変化が及ぼす心理効果について解説していきます。色から受け取る印象は、条件や個人の想像や経験などによる結びつきによって差が生じますが、本記事では一般的に多数の人がイメージしやすい印象について考えていきます。
一般的に、暖色系の物体を見て暖かみを感じたり、寒色系の物体を見てクールな印象を持ったりするのと同様に、光源の色温度が低いと暖色系の光源色になり、赤みがかった光が物体に照射されることで暖かい印象を与えます。一方、色温度が高いと寒色系の光源色となり、青みがかった光が物体に照射されるため、爽やかな印象を抱かせやすくなります。
色温度と人間の心理を表す代表的な指標として、「クルーゾフ(クルイトフ)効果」があります。これは、オランダの物理学者であるA.A.クルーゾフが1941年に発表した法則で、色温度と照度の関係によって人が感じる印象の違いを示しています。
照度とは、光源で照らされる面の明るさをルクス(lx)という単位で表したものです。照度は光源と照らされる物体の距離に関係しているため、同じ光源であったとしても、照らされる物体が離れるほど、照度は減少していきます。
クルーゾフ効果では、「高色温度×高照度」の光は涼しげで爽やかな印象を与え、「低色温度×低照度」の光は落ち着いた暖かい印象を与えるとされています。一方で、「高色温度×低照度」は寒々しく、「低色温度×高照度」は暑苦しいなどといった不快感を抱きやすい傾向に変化します。
この結果から、色温度が高い光源は「寒い・涼しい・爽快感」、色温度が低い光源は「暑い・暖かい・安心感」という感覚と結びついていることがわかり、色温度と心理の関係性を認識する目安として捉えられます。
色温度による心理効果は、照明選びにおける基準のひとつとして活用されています。
照明の色は、建物内の雰囲気を左右する大切な要素です。特に、窓の少ない商業施設などの建物は太陽光の影響を受けることが少ないため、照明が室内空間を演出する大きな役割を担います。
商品の色をきれいに見せたい物販店や清潔感を出したいクリーニング店などでは、色温度が高めの白い照明を使うことが一般的です。また、集中しやすい環境が求められる学校や職場でも、白い光の蛍光灯が多く使われています。
落ち着いて過ごせる空間を演出したい一部の飲食店やホテルなどでは、色温度の低いオレンジ色の照明が使われています。暖色系の光に包まれる照明は温かみがあり、穏やかな気持ちになりやすいので、寝室のライトにも向いています。
前述にもあったように、色温度の低い光源は赤みが強い光を放っており、暖かく落ち着いた印象を与えます。オレンジ系の光は、暖かい・穏やか・優しい・安心感といった心理と結びつきやすい光色です。
文献「色温度と照度が与える生理・心理機能への影響」の実験では、2000K・3000K・5000K・7000Kの照明のもとで集中力を必要とする課題と創造性を必要とする課題の2種類を行ない、生理・心理機能の測定をしています。創造性を必要とする課題ではリラックスしている時にアイデアが出やすいという結果になり、主観評価の「リラックス」「落ち着き」は低色温度の照明下で高く出ていました。
他の実験も見ると、3000K以下の色温度を持つ光源には比較的リラックス効果が期待されているようですが、くつろぎ空間に低色温度の照明が好ましいと感じるかについては差があるようです。
勉強や仕事、運動といった集中力が必要な環境では、色温度の高い光源が適しています。白や青みがかった光色は人の脳を覚醒させる作用があり、千葉大学の論文「身体運動時の光源色温度がヒトの生理機能と主観評価に与える影響」によると、色温度が5000Kの白い光が最もやる気の高まる光色とされています。
この論文の中の実験では、3000K・5000K・7000Kの光源のもとで運動を行い、運動中と回復時間中における心拍数や血圧などの生理パラメータの測定と、「やる気」や「集中力」といった8項目の心理状態を選択する主観評価が行われました。7000K時における生理パラメータの数値は他の色温度よりも高く、主観評価は「リラックス」が最も低い結果となりました。5000K時では「やる気」が最も高くなり、3000K時では「眠気」が最も高く、「集中力」が最も低くなりました。
この結果から、色温度が高い方が生理機能や集中力・やる気が高まりやすい傾向にあることがわかります。この実験は運動時における色温度の違いを調べたデータですが、勉強や作業における他の実験でも、色温度が高い環境の方が好ましいとする結果が出ています。
光は生活リズムを作る上で大切な要素であり、睡眠の質にも深く関わってきます。
良質な睡眠を取るには、すぐに眠れる・ぐっすり眠れる・すっきり目覚められることが重要となります。そのために必要なのが、サーカディアンリズム(概日リズム)です。
サーカディアンリズムとは、約24時間周期で変動する生理現象のことで、ほとんどの生物に存在しています。一般的な言葉で言うと、「体内時計」のことです。このサーカディアンリズムは睡眠に大きくかかわっており、入眠と覚醒といった睡眠リズムを調整してくれます。人間のサーカディアンリズムは約25時間とされていて、1日24時間と比べて約1時間のずれがあるものの、「光」「時間の認識」「食事」「運動」「外出」といった様々な刺激(同調因子)によって調整されます。中でも、催眠作用を持つメラトニンというホルモンは、この調整に深く関わっています。メラトニンは、夜に分泌量が高くなることが知られており、メラトニン分泌を妨げないことで自然な眠りに入ることができます。メラトニンの分泌は、明るく強い光を浴びると抑制されることが知られています。よって、入眠前には色温度の低い光源を使って、脳の覚醒を避けることが大事です。
睡眠中もまぶたを通過して入る光の影響を受けるため、寝室は覚醒しない光色を保つ必要があります。また、深夜に目が覚めて廊下やトイレに向かうことを考えると、こうした場所の照明も色温度の低い照明の方が不用意に覚醒することを避けられます。
朝は、爽やかな光を浴びることで脳と体が覚醒し、気持ち良く目覚めることができます。起床の30分程度前から光の照度を上げていくと、目覚めた後の眠気減少や注意集中感が高まるという研究結果があり、色温度は5000K程度が望ましいとされています。
このように、光と睡眠、サーカディアンリズムには密接な関わりがあることがわかります。光色をうまく活用して生活リズムを整えるには、入眠前・睡眠中は低色温度、起床前後は高色温度の光で過ごし、サーカディアンリズムに合った照明にすることがポイントです。
光色によって、人が感じ取る印象や精神状態などは変化します。照明選びでは色温度が重要な基準のひとつとなり、数値の違いで空間の雰囲気が一変するほどの影響を与えます。
温かみを感じる色温度の光源は、リラックスしたい空間で使用されています。昼間の太陽光に近い高色温度の照明は、集中力を高めたい学校やオフィス・商品をきれいに見せたい物販店など、幅広い環境で使用されている照明です。
一方で、照明がサーカディアンリズムに合っていないと、リズムが崩れてしまい、睡眠の質や日中の集中力に悪影響を及ぼすことがあります。日常生活や業務で安定したリズムを保つためには、太陽光に近い色温度を持つ照明が効果的です。
セリック株式会社では、室内で太陽光を忠実に再現できる人工太陽照明灯を提供しています。人工太陽照明灯は自然光のように時間帯や天候に左右されないため、お客様の求める太陽光を24時間365日お使いいただくことが可能です。
照明を太陽光の代替品とするためには、
(1)演色評価指数が太陽の100に近いこと
(2)色温度が太陽の5000~6000Kに近いこと
(3)十分な照度(2000ルクス以上)があること
この3つの条件を満たす必要があります。弊社の人工太陽照明灯は上記の3条件を完全にクリアしており、太陽の光に変わるものとして遜色ない製品となっています。
セリックの人工太陽照明灯は1987年の販売開始以来、印刷業界や自動車業界、商業施設など、あらゆる業界で採用されてきました。ご興味のある方はぜひ、セリック株式会社の製品ページもご覧ください。