私たち光源メーカーは、日ごろから光学測定器を度々使用します。
光源の分光分布を測定したり照度を測定したり、目的と求められる精度によって様々な光学測定器を使い分けて使用します。
可視光の分光分布や照度、色温度などを計測する時の計測器は、標準電球と言われる光源で値付けをされています。標準電球は、発せられる光の光束量、色温度などが値付けされています。測定器メーカーは標準電球を使って測定器を値付けし、測定器で測った値が正しいという前提を私たちのようなユーザーに提示してくれます。測定器は時間が経つと値が変わってくることがあるので、定期的にメーカーに返して校正してもらいます。この時も基準は標準電球で、同じように値付けされてユーザーに返却されます。
つまり、可視光には基準があって、測定器は定められた基準に従って製作されます。
弊社でも光源メーカーとして標準電球を持っています。但し弊社のようなメーカーが持っているのは二次標準電球で、産業技術総合研究所などが持つ一次標準電球によって値付けされた電球の事を言います。
では、紫外線測定の場合はどうでしょうか。
実は、紫外線計を校正するための標準電球というのが、世の中に無いんです。驚きますよね。
紫外線計のメーカーは、独自の基準で独自に値付けされた紫外線計を製造販売しています。なので、同じ光源の光を同じ条件で、違うメーカーの紫外線計で測定すると、値が違います。以前弊社のお客様から、「セリックの光源を、自社で所有している3社の紫外線計それぞれで測ると、すべて値が違うがどうしてだ?」という質問を受け、専門家に聞いたり専門書を読んだりして調べたことがあります。その結果わかったことは、紫外線計を校正するための標準電球というのは世の中に無く、各メーカー独自の基準で製造している、ということでした。
弊社が光毒性試験用太陽光照射装置を開発し、1号機を一般財団法人食品薬品安全センター様に納入した際、照射光の紫外線強度をどの紫外線強度計で測るか議論になりました。
そこで医薬品業界で一般的に使用されているトプコン社製紫外線強度計が選ばれた、という経緯があります。例えば他のメーカーのUV計の指示値がトプコン社のUV計より低い値を示した場合、必要な紫外線強度に調整するために光源の出力を上げることになります。そうすると、トプコン社製のUV計で規定した紫外線強度よりも強い光で照射実験することになり、光毒性試験の結果の信頼性が危うくなってしまいます。なので、「何で測った紫外線強度を正しいと定義するか」が重要なのです。
今、空気の殺菌やウィルス除去で紫外線が注目され、多くの商品が販売されています。紫外線はいわゆる“ホット”なテーマと言えますが、前述のように紫外線測定には世界基準がないことは知られざる事実として皆さんにお知らせ致します。
<参考文献>
・照明用語辞典(オーム社、社団法人照明学会編)